司会 その中で、親もどうやって学んだらいいのか、また子どもの学びのつまずきがわからない親もいるようです。学び方を学ぶということが、そして学んでどうするのかということを問うことが大事なのではと思うのですが、代田さんはこのほど、『親子で楽しむ学び方』という本を出したということですね。
代田 この『親子で楽しむ学び方』というのは世界でも初めての企画です。今までは親子で苦しむとか、親がだめにした学び方なんですよ。この本の原作者は非常にすぐれた教育実践哲学を持っていて、私は大変感銘を受けたのですが、日本の多くの先生方はこれを嫌がっている。教育学部でこういう学び方を教えているところも皆無です。
今、親は子どもを学びの難民に追いやっているんです。これを変えるためには、将来の夢実現への学びの楽しさを教えることです。そういうことを今、家庭ではほとんど教えていない。「きょうの試験どうだった?まただめだったのね?お母さんはもうあきらめたわ」なんて会話なんですから。テストで点が取れないのは、決してお子さんの頭の良しあしではありません。学び方の「良しあし」なんですよ。
戦後の教育を総括すると、この一番大事な学ぶ楽しさ、学びの夢発見指導がないんですね。
渡邉さんは郁文館夢学園での改革で、子どもたちが本当に学びを深め、自分の夢を見つけ出すことができるように、どのような工夫をしていますか?
渡邉 昔だったら、子どもがお父さんの背中を見ながら、畳っていうのはこうやってつくるんだとか、大工っていうのはこうだとか思っていたわけです。今の社会は、子どもたちには閉ざされているんです。その結果、自分がどういう仕事をするのか、自分が社会の中でどう参加していくのかというイメージがつかめない。だから僕は、世界はこうなっていて、日本っていうのはこうなっている、それでそれぞれの組織の中で闘っているんだよという話をして、君たちはその中でどんな仕事が好きか聞くんです。
その時に大事なのは、知識が入って興味を持ったら、今度はモデルを見せることです。
たとえば生徒がお医者さんになりたいと言ったら、僕は自分の経営している盈進会病院からナンバーワンの医者に来てもらい、医者とはなんぞや、どうやって医者になったか、医者として一番幸せだったことなど全部語らせるんです。これを「夢達人ライブ」と呼んでいるんですが、これをやると子どもは、ああこの人カッコいいなって思う。
自らこういう生き方をしたいと思ったときに、スイッチが入るんです。じゃあこの人みたいになるためにはこの大学に、こういう目的のために行こうと。
代田 人生のモデルを見せてこなかった、見せられなかった大人の罪は大きいですね。
渡邉 子どもに対して自分の仕事を語れる親が非常に少ないです。だから僕は、社員に、月曜日の朝、さあ仕事だとわくわくしながら出勤しているかと聞くわけです。 父親が月曜日の朝、疲れて行きたくないなーと愚痴を言いながら出勤していったら、そりゃ子どもは仕事するのは嫌だって洗脳されますよ。
代田 社会に出るのがいやになりますね。
渡邉 いやになりますよ。仕事って辛いものだと背中で語っているわけです。僕の子どもたちは「なんでそんなに仕事楽しいの?」って毎週のように必ず僕に質問します。仕事って、こんなに楽しいんだぞと言い続けていると、うちの子どもたちもだんだん早く社会に出たくなりますよね。これって大事なことです。イチローのお父さんが、バッティングセンターに連れていってイチローに打たせなかったって話、有名ですよね。で、お父さんがバッティングを楽しむのをイチローが見ていて、やらせてくれと言って初めて練習に入ったという話ですが、まさにまず大人が楽しむことであり、大人が学ぶことだと思います。それができれば子どもは自然に学ぶんですよ。
司会 そうすると青少年問題で「今の子どもたちは…」といろいろ言われるけれど、子どもたちがそういう学びの楽しさを見いだせなかったのは、大人の側に大きな問題がありそうですね。
渡邉 子どもは狼に育てられたら狼になるわけですから。だから、今の子どもの教育問題というのは、実は大人の問題だと思います。物を持ったら幸せなのか、金を持ったら幸せなのか、いい大学に行ったら幸せなのかという大事なところの問いかけがなかったように思います。それが、教育における最大の欠落した点だと僕は思いますね。
大事なのは、お金も学歴も、目的ではなく道具だという認識で、それが足りないんです。両方ともそれ自体が目的になってしまっている。使う目的がなかったら、お金なんか貯めてもしようがないんですね。


