司会 郁文館夢学園の理事長として教育改革を実践してきた中で見えてきた今日の教育問題の本質について、渡邉さんから話してください。
渡邉 問題の本質は、教育が子どもたちの幸せのためという目的が非常に曖昧になっているところにあると思います。僕は神奈川県教育委員会の委員もやっているんですが、私学と公立で話し合いをしてその定員数を決めていく実態を知ったわけです。そうすると、公立に入れず、金銭面の理由で私立に行けない子どもたちが、神奈川県だけで1000人以上も定時制に行っているわけですよ。
そんな話があるかと。僕は私立の経営者ですけど、私立の経営者を守るために、どうして子どもたちが昼間じゃなく夜に行かなければならないんだという事実に、僕は今、抗議しています。
だから今、日本の教育をだめにしているのは、自分たちの既得権を守っている大人だと思いますね。僕は外食産業でずっとやってきて外から見るから、よくわかるんです。
代田 どっちを見ているのか。子どもを見ているのか。
渡邉 ええ。だから僕は、授業で去年と同じことをするのは絶対許さないと先生たちに言っているんです。でも去年と同じ授業をしつづけている先生がいるわけです。30年も前のノートで授業している姿を見た時には、もう気絶しそうになりましたね。
改善を重ねていけば教え方は変わるでしょう。
司会 学校改革からそういう風景が見えたのですね。
渡邉 今までは、いい大学に行くというのがすべてのインセンティブになっていました。僕は実際に年間約5000人の大学生と話し合うのですが、彼らの多くは卒業の時点で、できれば仕事をしたくないと言っているんです。小・中・高校の学問の目的がいい大学に入ることですから、いい大学に入ったら、人生がそこで終わるんです。そんな教育ってありますか。
日本人の多くの、いい大学に行くことが幸せだという間違った価値観が、日本の戦後教育をだめにした一番の原因ではないでしょうか。大人が正しい価値観を子どもたちに教えられなかったんです。だから僕は、郁文館で夢教育をやるんです。
司会 いい大学、いい企業という今までの「受験神話」は崩れつつあるとしても、まだまだ根強いですね。代田さんはそういう大学受験の側をやってきて、いい大学、いい企業というのを、どのように捉えていますか。
代田 私は大学受験や進学関係に長年携わってきて「戦後の大学受験進学60年史」をまとめ、その将来像を考えてきました。そこで提言したいのは、今、渡邉さんが言われたように、戦後の大学受験進学の意識に大きな問題点をかかえているということです。要するに、大学に入りさえすればよいという目的のない勉強を続けてきたことです。
この60年間、大学受験と進学には偏差値指向、テスト至上主義が根強くあって、学びへのモチベーションが低いのです。今ちょうど受験期を迎える子どもたちの親は昭和後期の「偏差値DNA」で育っています。ですから、本当の学び方を教えられない。
渡邉 そうですね。自分たちが教わってないですからね。
代田 そこですよ。ですから親の意識改革が不可欠なんです。今、親の高学歴化は進んでいるんですが、それとは逆に、子どものドロップ・アウト率は高くなっている。